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アラフィフのおっさんが趣味の登山・写真・日常を綴るブログ。

HBO「チェルノブイリ」と吉村昭「関東大震災」に思うこと。

こんにちは、GreenFielderです。

今回はシリアスな内容の2作品について、思うところを書いてみます。

いずれも近現代に起きた重大事故・災害について、事実に基づいて作られた作品です。

どちらも大抵の皆さんは「よく知っている」事故・災害であろうとは思いますが、もしかしたらそれらを深く掘り下げた方は少ないかもしれない、と思います。そういう方は是非これらの作品に向き合って頂ければ幸いです。

 

1. HBO「チェルノブイリ

本作品は、米国のHBOが制作したドラマです。ドキュメンタリーではなく、当時のソ連で1986年に起きたチェルノブイリ原発事故に関わった人々を英語圏の俳優が演じるかたちで作られています。

一部架空の人物も登場させていますが、個人的にはかなり現実に即した表現になっているのではないかと思います。

私は、以前米国のローカルスタッフから、「あの作品は絶対に見るべきだ」と言われていて、先日の出張時に往路の機内でこの作品を見つけ、寝るのも忘れて5つのエピソードをぶっ通しで見ました。それはとても衝撃的でした。

事故発生直後に現地の責任者は原子炉が爆発する「はずがない」と事実を認めず中央に報告。その為真実を知らないまま現場で消火活動に当たった消防士達は致死量の放射線を浴び苦しみながら死んでいく。

妊娠していたその消防士の妻は、死ぬまで夫に付き添ったことで赤ちゃんに放射能汚染が蓄積し生まれてすぐに亡くなってしまう。

世界レベルの放射能汚染で有ることを隠しながら西側諸国に支援を要請し、無人ロボットの供給を受けるも、ロボットの防護力を遥かに上回る放射線量でロボットが瞬時に機能停止し憤る事故処理責任者。

事故当時、原子炉停止ボタンを押したにも関わらず原子炉爆発が起こり、死ぬ直前まで「自分は正しいことをした」と訴えた運転員(実際には、数年前から原子炉停止システムの不具合が分かっていたにもかかわらず隠匿され、対策されていなかった)。

軍に徴集され、放射線にさらされながら高濃度汚染物質の作業に従事する人々。

とても衝撃的で痛ましい映像に目を背けたくなるのですが、「それが現実だった」と思い最後まで見ました。

実は私は、1999年に東海村で起こった臨界事故で被曝したある方が入院して亡くなるまでの治療の様子と、医療従事者の思いを綴った「朽ちていったいのち〜被曝治療83日間の記録」の一部を読んだことがあります。

「一部」というのは、その書籍自体を読んだのではなく、ネットにあったその抜粋部分を読んだだけでした。しかし、その抜粋された文章だけで、被爆患者・家族の苦しみ、前例のない被爆量の患者を目の前に絶望しつつ治療を続ける医療従事者達の心の葛藤が強く感じられ、重く黒いものが体に残ったのを覚えています。

その文章からだけでも十分に伝わってきた患者の様子が、この「チェルノブイリ」では映像として出てきます。おそらくその映像に目を背けてしまう方もいると思います。でも、それはチェルノブイリでもJCO臨界事故でも起こった事実なのです。私はその映像を直視し、あの時のような「重く黒いもの」が体に残るのを感じました。

原子炉事故を題材にした書籍・映像作品は他にも有ります(福島第一原発の映画もありましたね)。原子力を肯定する人も否定する人も、これらの作品の一つでも見て、読んでもらえたらな、と思います。

私は、米国で公開されているオッペンハイマーも見てみたいと思っています。何故か日本では公開されていません。私はおそらく今後も米国に行くことはありそうなので、日本で公開されずとも、米国で映画館に足を運びたいと思います。

 

2. 吉村昭関東大震災

私の好きな作家、吉村昭さんの作品です。奇しくも本書を読み始めた前後が、関東大震災から100年目のその日だったと思います。

関東大震災の被害は、神奈川県の死者の多くが圧死、東京市での死者の多くが焼死だったわけですが、その様子、特に焼死者が集中した陸軍被服廠跡地での火災旋風の威力と現場の凄惨な様子が生々しく描かれています。

そして、そんな悲惨な現場でも、物盗りをする輩が多数いたことも淡々と書かれています。

更に、当時の状況(社会主義勢力の急増、併合した朝鮮からの労働力の大量流入)もあり、自警団による社会主義者や朝鮮移民の虐殺なども描かれており、人間の業・残忍さ、そして集団心理の恐ろしさも感じ慄然とさせられます。

それに比べると、東日本大震災では未曾有の災害によって物理的・精神的なダメージを受けても、忍耐強く避難生活を続けた被災地の方々には頭が下がります。

昨今、関東での直下型大地震が予想されています。関東大震災当時に比べ、建物の耐震性や住民の防災意識は高まっていると思いますが、それでも多大な被害と長期間のインフラ途絶の恐れが有ります。

あらためて、地震に対する物理的・精神的備えを再確認しようと思いました。

 

暗くなる話題では有りますが、あらためて考えるきっかけとなりましたら幸いです。

 

最後までご覧頂きありがとうございました!

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