こんにちは、GreenFielderです。
昨日は、以下の記事にて沢木耕太郎さんの「凍」を紹介しました。
この記事の中でも触れましたが、今回は同じく山野井さん関連の本を2つ纏めて紹介します!
1.丸山直樹「ソロ」
丸山直樹さんの山野井さんに関するノンフィクション作品です。
ギャチュンカンを中心に書かれた沢木さんの「凍」と違い、こちらはギャチュンカン前までの山野井さんの記録です。
同じ山野井さん本人に直接取材してのノンフィクション作品ですが、沢木さんの作品と丸山さんの作品では大きくトーンが異なります。
1つ目は著者の作品の中でのポジションです。「凍」の中では、山野井夫妻の一人称で書かれている(最後の最後に沢木さんと思われる人が登場しますが、敢えて沢木さん本人とは書かれていない)ことです。これにより、読者は山野井さん夫妻になったかのように作品に入り込めるようになっています(私個人の印象です)。一方、「ソロ」では、著者自身が登場(著者が山野井さんと会話している時の様子なども記載)しています。それにより、読者は「著者の視点」で作品を読むことになり、より「ルポルタージュ」的な読後感となります。これはどちらが良いということではなくあくまで手法の問題です。
2つ目は著者自身の意思表示の有無です。上記の通り「凍」では著者はあくまで透明な存在であるのに対して、「ソロ」では、自らも大学山岳部出身でかなりの登山歴をもつ著者の、山野井さんへの「思い」が強く述べられています。そして、その「強い思い」が、あまりに強過ぎて、読者によって、特に山野井さんに好意的な感情を持つ読者にとっては、多少「不愉快」と感じるかもしれません。正しい例えか分かりませんが、熱血上司が部下に「成長して欲しい、早く一人前になって欲しい」というあまりに強く情熱的な思いから、本人が「愛の叱咤激励」と思っていた指導が周囲から「パワハラ」と認定されてしまうような。。。
(ちょっと違うかもしれません・・・)
私も読んでいて若干不愉快な感情が沸いた箇所もありますが、ただその山野井さんへの熱い思いはストレートに伝わってきます。山野井さん自身も、著者の丸山さんに対しては悪感情は無かったように答えていたと思います。
いずれにしても、山野井さんをよく知りたい皆さんにとっては避けて通れない(?)作品だと思いますので、覚悟を決めて(?)読んでみてください!
なお、先月くらいの「山と渓谷」の中で丸山さんが今年2月に亡くなられたと記載されていました。丸山さんのご冥福をお祈り申し上げます。
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2.山野井泰史「垂直の記憶」
こちらはご本人がギャチュンカンからの生還後に、それまでのロッククライミングや困難な高峰未踏峰ルートへの挑戦などの歴史を振り返り、今後への思いなどを綴った作品です。
山野井さんは、数々の輝かしい登攀記録を持っていて、同時に敗退(登攀断念し撤退)した記録も少なくありません。いずれの登攀記録も過酷な環境の中で、しかも主に無酸素・単独登攀で成し遂げています。そして何よりも、それだけ困難な挑戦を続けても必ず「生還している」ことが凄いのです。
そんな山野井さんの自著ですから、さぞかしリアリティに溢れ、鬼気迫る内容なのだろうと期待(?)するかもしれませんが、私は読んである意味肩透かしを食らったな、という感想です。ご本人の性格からなのか、実際に登攀中本人が冷静(と本人が言っている)だからなのか、文章が淡々としているのです。「凍」や「ソロ」で感じる過酷さをあまり感じられません。
余談ですが、山野井さんは2008年に奥多摩でトレーニング中に熊に襲われ顔や腕に90針を縫う大けがをしています(以下の記事に詳しいので読んでみてください)。
この記事の最後にある山野井さんの話もそうですし、ご本人のブログにも書かれていますが、とても淡々としていて、寧ろ襲ってきた熊親子のその後を心配しています。
昨年末にピオレドール生涯功労賞を受賞した際も、淡々と、でも素直に喜びを表現していらっしゃいました。
成し遂げてきた登攀の記録もさることながら、その人柄も、私が大ファンである大きな理由の一つです。
そんな山野井さんの人柄が垣間見れるこの作品も、是非読んでみてくださいね!
最後までご覧頂きありがとうございました。